山口県の農業
なす
なすの原産地はインドです。ヨーロッパでは長い間、花の観賞用として栽培されていたのだとか。アメリカに渡ってから、品種開発が進んだそうです。インドから中国を経由して伝わり、奈良時代ごろから盛んに栽培されていました。今では全国各地で伝統野菜として様々な品種が残っています。これは、なすが風土に適応する能力に優れているためです。また、インドの高温多湿な気候と日本の環境が似ているのも、なすの栽培が広まった理由の1つです。日本では「一富士、二鷹、三茄子」とも言われ、縁起物とされるなす。夏の風物詩のひとつとも言える、馴染み深い野菜です。
栄養素
なすに含まれる栄養素に、ナスニンとカリウムが挙げられます。ナスニンはなすの皮に含まれる特有のポリフェノールで、青紫色の色素成分。果肉に含まれるクロロゲン酸とともに強い抗酸化作用があり、がんや動脈硬化、老化の予防に効果があると言われています。また、眼精疲労の緩和も期待できます。カリウムは、体の熱を逃がす効果があるため、夏バテ解消につながります。体を冷やしたくない人は、食べ過ぎに注意しましょう。
選び方
ヘタの切り口が白く綺麗で、みずみずしいものを選びます。ガクのトゲトゲは立っている方が、収穫から間もない証拠です。皮にハリとツヤがあり、表面に傷が入っていないかを確認しましょう。なすの実のほとんどは水分です。持ってみて軽かったら、水分が飛んでスカスカになっている可能性があるので注意しましょう。
保存方法
なすは水分が蒸発しやすく冷気に弱い野菜。ラップかポリ袋で包んで、風が当たらないよう冷蔵庫で保存します。ただし、温度が5度以下になると低温障害を起こし種が黒くなります。涼しい場所では、常温で保存も可能です。長く保存する場合は、調理してから密閉容器に入れ、冷凍保存します。最近は冷凍食品として揚げなすが店頭に並んでいます。これらを活用するのも良いでしょう。
調理・料理
なすはアクが強く、時間が経つと切り口が変色してしまいますが、アクの正体はクロロゲン酸などのポリフェノール。水に晒しすぎると、これらの栄養素が流出してしまいます。あく抜きの時間は極力少なめに。すぐに調理する場合は必要ありません。なすは油と相性のいい野菜です。素揚げしてから炒め物にしたり、煮物にしたりすると一層美味しくいただけます。また、水分が多いので、生のまま調理する際は、なすから出てくることを考えて、全体の水分量を調整しましょう。
栽培状況
なすは古くから全国各地で栽培されてきました。現在は、高知県、熊本県、群馬県などを中心に生産されています。特に高知県は、温暖な気候を生かした促成栽培が盛んで、冬から春にかけて出荷されるなすの生産を担っています。県の特産として、「焼きなすのアイス」を始め、たくさんの加工品やメニューがあります。山口県では、下関市吉田地区が産地として有名で、積極的になすの生産を行なっています。
主な品種
一般的に食べられているのは「千両なす」と呼ばれる品種です。なすは、日本中で地域ごとに特色ある品種が栽培されています。宮城県の「仙台長なす」、静岡県の「折戸なす」、滋賀県の「下田なす」、宮崎県の「佐土原なす」などが有名です。大きく分けると、細長い見た目の「長なす」と、丸い見た目の「丸なす」に分けられます。丸なすは京都府上賀茂地域発祥の伝統野菜で、田楽に使われることで有名です。山口県では、萩市、長門市で「田屋なす」を栽培しており、一定の基準(大きさや重量等)をクリアしたものが「萩たまげなす」として出荷されています。実がとても大きく、一方で果肉が柔らかく、広く料理に使える品種です。
旬
なすの旬は5月〜10月ごろまで。特に、9月ごろから収穫されるなすは「秋なす」と呼ばれ、種が少なく果肉がしまっているので人気です。冬から春にかけて出回っているのは、ほとんどが高知県でハウス栽培により育てられたもの。現在は1年中ありますが、やはり旬の時期に収穫されたものは栄養価も高くみずみずしいのでおすすめです。体を冷やす効果もあるので、夏の時期には是非いただきたいものです。